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セルフレスキュー・コンセプト

1号艇の田中です。

 

セルフレスキュー艇という船種を考えます。

セルフレスキューという用語が既に有り、既に優れたテクニックが多く存在しますね。

 

私も何種類かのテクニックを身につけて 少し手を加えて常用しています。

 

半場さんはカヤックやカヌーの日本でのパイオニアの1人ですから そのテクニックの

創生期からの話にことかかず、私は話を聞いていて聞き飽きる事がありません。

 

YT17はスタンドアローンカヤックと名付けて 格好をつけてはいますが、

要するに船種はセルフレスキュー艇です。

 

パドラーが判断を誤って、望まない海況に突入した時、自分を自分自身で、

その時乗っているカヤックでレスキューするというコンセプトで造られたカヤックです。

 

YT17は普段乗っている時には遊びながらセルフレスキューテクニックを練習して、

いざという時、落ち着いてセルフレスキュー機能を発動できるように長年かけてデザインしました。

私が非常に臆病なのと、半場さんに少年の頃から面倒見てもらっていた事がとても役に立ちましたね。

 

大量の浮力体の適所配置、カヤック専用のリーシュコードやパドルストックの装備は分かりやすい装備ですが、

セーリングシステムもセルフレスキューシステムです。

当初はカヤックが苦手な、斜め後ろからの強風に吹かれ続けた時に迷走しないように考えた装備でした。

セーリングの経験も長い我々にとっては、斜め後ろからの風は最もおいしい風でした。

カヤックにセーリングシステムを装備したのは、セーリングテクニックを、

カヤッカーが望まない海況、海域から早く脱出するための テクニックとして考えたからです。

 

セーリングヨットにはラダーが必需ですが、YT17はラダーレスです。

追手の風にバンバン吹かれて、なんとかたたどり着いた 見知らぬ海岸に上陸するための

テクニックを開発中、最も壊れ、最も邪魔になると考えたのがラダーのシステム全般でした。

その結果デザインした、ラダーレス・セーリングシステムです。

 

我々はカヤックのスピードを逃げ足として考えます。

望まない海況からの脱出の逃げ足の速さは平水でのスピードとは殆ど共通しないと考え、

荒れた海面での高速巡航用ハル・デザインに重点を置いています。

 

するどく尖って反り上がったバウデザインはカヤックの特徴ですが、追っ手の風、波、が吹き荒れる

見知らぬ海岸へ上陸時、波に乗りやすく、バウを突っ込みやすいデザインは望ましくない と判断し、

YT17のバウはややボリュームを持たせ、浮力で足りない分はコンケーブで正圧を発生させて補うデザインとなってます。

これはサーフィンのロングボードで言う所の、ノーズコンケーブの発想と同類です。

ロングボードのサーファーがノーズライドするための浮力を発生する形状です。

 

転覆状態で浸水が無く、起こす時に自動的に排水が可能なシステムも付与。

その他、YT17の全てのデザインコンセプトはセルフレスキューカヤック・コンセプトです。

 

かつての荒くれ者、半場さんは今は大きな役目をはたし終え、そのセルフレスキューコンセプトのカヤックで

ゆっくりくつろぎながら、本当に楽しそうです。