海で自立する為のデザインコンセプト

YT17(Yokoyama tribute 17ft)の船体設計について

ヨット設計者横山晃氏が亡くなられる前に沢山お聞きした話と数値をできる限り踏襲して設計しました。

シアーラインから下には流体力学などの知識のない私達は 経験値などを盛り込む事をしなかった事が、この高性能を生んだと考えています。

 

多くのシーカヤックとは設計思想と それに伴うハル形状が大きく異なります。

船体を横から見たとき、多くのシーカヤックのように鋭い反り上がりが無く、バウとスターンは顎(ステム)が反り上がることはありません。

造波抵抗を減らすために大切な水線長は全長とイコールとしました。

真上から見るとバウ(前)側は鋭く尖らず、浮力が大きく太って見え、スターン(後ろ)は痩せて水線長を残し浮力を減らす設計です。これは安定を損なう追波で、スターンの浮き過ぎを減らし、バウの浮力と相まって波に突っ込む事を防いでいます。

一般に想像するスマート、スパルタン、スピード感とは違う形状に”見え”ます。

 

多くの艇はコクピット付近にボリュームを持たせる事で浮力を集中させ、前後を鋭く尖らせる事でスピードを稼ごうとするのが一般ですが、YT17ではそのボリューム集中はなく、膨らみは吃水上あたりに前後に長く伸びて、ゆるく全体的にスムーズなラインを実現しています。(これはカヤックの直進方向と常に平行とは限らない、全ての方向にスムーズなライン)水線下でも水流が直線に近い、ゆるいラインで構成さレているので、水の流れがスムーズにハルに沿うように設計され、摩擦抵抗を極力減らしています。(これも直進方向に常に平行とは限らない)

これは手の平でYT17のハルを多方向に早くさすって見ると抵抗の少ないのがよく分かります。

 

そして傾いた時は傾いた側の前後に長いふくらみが沈み、臨時に大きな浮力となって圧倒的な安定を生み出し、バウのふくらみがセーリングなど高速時に強く作用してヒールを抑えます。

その反り上がらないバウラインが波を貫き無駄な上下運動を防ぎ、長く伸びた浮力が一定以上の突っ込みを防いでいます。

多方向からの波パンチも浮力で受け流し直進性を失いません。

浮力は余分に持たせると船型が太るので、バウ付近のハルの曲率を変化させることで水流に正圧を発生させ、スマートなラインのままバウの2次浮力を大きくしています。

 

書き連ねたのは、あくまで我々がYT17を使い込んで解った事を船体から想像した結果です。

惜しくも亡くなってしまった横山先生の設計が生み出した結果の高性能です。  

他にもこの設計から感じる事はたくさん有ります。もっとお聞きしたかったな~

 

 

いくつかの我々の動画を見ているうちに感じると思いますが、パドルを止めた後の惰性がいつまでも残るのが分かります。

 

パドリング時の手応えも、3ストロークめからの手応えが非常に少ないカヤックです。