1号艇田中です。
昔、水泳部にいた友人が、自由形の世界記録を出すのだと言い、足ヒレと手ヒレを装着すると言うので
彼の顔をみたが、冗談ではなく 真顔で言っていた。
レーザーレーサーという 抵抗のうんと低い加工がされた水着は、当時はまだ無かったが、有ればそれを着ただろう。
イアン・ソープ(当時のチャンピオン)の手足のサイズをしっているか?と彼は言った。ソープの手には、カエルの様な水かき も有るのだと。
自分の泳法や技術に自信があっても、相手選手が自前の足ヒレを付けた状態で比較されてはたまらない、と言うのが彼の見解だった。
技術とスピードを競うなら、体格を共通化してくれと、彼は言いたかった。
体格の違いってそんなに大きいのか?と聞くと、
水中では圧倒的な違いだ、との答えだった。
彼は流体力学の専門では無かったが、その差を体では知っていた。
体の浮力も大きな問題で、ただ筋肉をまとえば良いというのは違う、
パワーは欲しいが皮下脂肪も欲しい、でも太るのも抵抗になる。
ウェアで浮力を変えるのも有りだ、との事でした。
泳法についても聞いたが、ハンドストロークの多くは 浮力の発生に使うと言う。
やってみせてくれたが、今思うと カヤックでは パドリングのスカーリングの動きだった。
彼の手で作る形は大きなスプーンそのもので、その手を水中でサッと動かし 発生させた浮力体を手の平に維持しながら、それを体の中心線の真下に通し移動させる動作を、私が理解するまで繰り返し見せてくれた。
YT17のハルをさする時、時々 彼の事を思い出します。
彼がこのハルの造形を見たら何というだろう。
おそらく、カヤックを通して水流を体感出来て、間違いなく パドルを通して水圧を自在に操るであろう彼がYT17を漕いだら、あの真顔で何と言うのだろうか。
日本は息苦しい、と言って今は海外に住んでいると聞くので
実現はしませんが、本当はこのカヤックに 乗ってもらいたい友人の1人。
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